
物語から作るオリジナル曲、その考え方
著者 鈴木 美咲 — Songiveの作詞担当
更新日 読了 約 8 分ガイド
心に残るオリジナル曲は、名前を差し替えたテンプレートではありません。その一人のためにしか書けなかった一曲です。物語から作るオリジナル曲は、相手の固有の出来事を起点にして、ほかの誰にも当てはまらない歌詞をつくります。
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物語から作るオリジナル曲とは、贈る相手に実際に起きた出来事を起点にして書く一曲のことです。名前や続柄を入れ替えるだけのテンプレートとは違います。その人にしか当てはまらない場面を一行目に置く。それが「物語から作る」という考え方です。私たちはこれまで多くの歌を作ってきました。心に残る歌と、流れていく歌の差は、ほとんどここで決まります。
物語から作るオリジナル曲とは: 相手の名前や肩書きから書き始めるのではなく、その人に起きた具体的な出来事を最初に決めて、そこから歌詞を組み立てる作り方です。差し替え可能な言葉を避け、その一人にしか当てはまらない一行を中心に置きます。
同じブリーフから、二つの歌
まず、よくある例を一つ。「優しいお母さん、いつもありがとう、家族思いです」。これだけでも歌は作れます。けれど、できあがるのは、誰のお母さんにも当てはまる歌です。聴いたお母さんは「いい歌だね」と言うでしょう。それで終わってしまいます。
もう一つ。「母は毎朝、私が起きる前に味噌汁を作る。出汁を取る音で目が覚める。一度も寝坊して作らなかった日がない」。この三行から書いた歌は、ほかの誰のお母さんにも当てはまりません。出汁の音という固有の場面があるからです。冒頭で聴いてもらえるお母さんのための一曲も、台所の小さな習慣から始まりました。差は、優しさの量ではありません。場面の固有さです。
数をこなして見えてきたこと
たくさんの歌を作るうちに、いくつかの傾向がはっきりしてきました。正確な数字を出すつもりはありません。ただ、繰り返し目にするパターンがあります。
形容詞は、歌を弱くする
「優しい」「頑張り屋」「家族思い」。こうした言葉が並んだブリーフほど、歌は平らになります。形容詞は要約です。要約からは固有の場面が消えています。「優しい」と書く代わりに、その人が優しいと感じた一日を書く。たとえば、熱を出した夜にずっと枕元にいてくれた、というように。形容詞を一つの出来事に置き換えるだけで、歌は別物になります。
弱点や癖が、いちばん効く
完璧な人の歌は、不思議と印象に残りません。むしろ、方向音痴で毎回道に迷う父、カラオケでいつも同じ曲しか歌わない祖父、こうした少しの欠けが歌に体温を与えます。ずっとの親友へ贈る一曲でも、いちばん効いたのは長所ではなく、二人だけが笑える小さな失敗でした。欠点を隠したブリーフより、正直なブリーフのほうが、ずっといい歌になります。
短い具体は、長い説明に勝つ
ブリーフは長ければいいわけではありません。「お父さんについて」という質問に、便箋三枚を埋める人もいます。けれど効くのは、その中のたった一行です。「日曜の朝、必ずベランダで盆栽に水をやる」。この一行があれば足ります。説明を尽くすより、忘れられない一場面を一つ思い出すほうが、歌は強くなります。
ふたりだけの言葉は、訳さなくていい
家庭の中だけで通じるあだ名や合言葉。外から見れば意味がわからなくても、贈る相手には一発で届きます。私たちはそれを説明せずに歌詞へ入れます。説明した瞬間、内輪の言葉ではなくなるからです。意味が分からないまま置いておく。それが、その人だけに刺さる鍵になります。
物語から作る、四つの手順
物語から作るオリジナル曲は、相手を要約するのをやめて、一つの場面を選ぶところから始まります。手順はシンプルです。
- 一つの場面を選ぶ。 その人を思い浮かべて、最初に浮かんだ具体的な一日を書きます。引っ越しの日、退院の朝、初めて二人で行った店。要約ではなく、時間と場所のある場面を。
- そこに何があったかを書く。 誰が何を言ったか、どんな匂いがしたか、何時だったか。細部があるほど、その場面はほかの誰にも当てはまらなくなります。
- 形容詞を出来事に置き換える。 「優しい」と書きたくなったら、優しさを感じた瞬間を一つ探します。言葉の説明より、出来事のほうが歌に変わりやすいからです。
- ふたりだけの言葉を一つ足す。 あだ名、口癖、合言葉。説明はいりません。それが歌の中で、その人だけに向いた印になります。
ほかの作り方との違い
物語から作る方法を、ほかの選び方と並べてみます。市販のカバー曲は、歌は完璧でも、相手の名前も出来事も入りません。プレイリストは気持ちの方向は伝わりますが、その人のために書かれた言葉ではありません。自動生成のツールは速いものの、何を入力するかで質が決まり、要約を入れれば要約の歌が返ります。Songfinchのような外注は固有の歌になりますが、納期に数日かかります。Songiveは、贈る相手のメモから始めて、固有の場面を歌詞の中心に置き、名前をサビに入れた一曲を短時間で届けます。
| 作り方 | 固有の場面が入るか | 名前がサビに入るか | 仕上がりの速さ |
|---|---|---|---|
| Songive(物語から作る) | はい | はい | 速い |
| Songfinch | はい | はい | 数日 |
| 自動生成ツール | 入力次第 | 入力次第 | 速い |
| 市販のカバー曲 | いいえ | いいえ | すぐ |
| プレイリスト | いいえ | いいえ | すぐ |
ブリーフに何を書くか
父の日まであと四日です。お父さんへの一曲を考えているなら、要約ではなく、次の四つを書いてみてください。
- 忘れられない一場面。 「子どもの頃、自転車に乗れた日、ずっと後ろを支えていてくれた」。出来事を一つ、時間と場所つきで。
- その人の小さな癖。 「テレビを見ながらいつの間にか寝て、起こすと『見てた』と言う」。完璧さより、こうした欠けが歌に体温を入れます。
- ふたりだけの言葉。 あだ名でも合言葉でも。説明はいりません。歌の中で、その人だけに届く印になります。
- 今いちばん伝えたいこと。 「ありがとう」では弱いので、何に対してかを一行で。「毎週末、文句も言わずに送り迎えしてくれたこと」。
この四つがあれば、ほかの誰にも当てはまらない一曲が書けます。書き方に迷うときは、歌のブリーフに何を書くかも参考になります。
よくあるご質問
物語から作るオリジナル曲とは何ですか。▾
贈る相手に実際に起きた出来事を起点にして書く一曲のことです。名前や続柄を差し替えるテンプレートとは違い、その人にしか当てはまらない固有の場面を歌詞の中心に置きます。だからこそ、ほかの誰にも当てはまらない歌になります。
なぜテンプレート的な歌は心に残らないのですか。▾
誰にでも当てはまる言葉でできているからです。「優しい」「家族思い」といった形容詞は要約であり、固有の場面が消えています。聴いた人は「いい歌だね」とは言いますが、自分のための歌だとは感じにくいのです。
ブリーフは長く書いたほうがいいですか。▾
長さは関係ありません。便箋三枚より、忘れられない一場面を一行で書くほうが、ずっといい歌になります。説明を尽くすより、時間と場所のある具体的な出来事を一つ選んでください。
ふたりだけにしか通じない言葉も入れていいですか。▾
ぜひ入れてください。外から意味が分からなくても、贈る相手には一発で届きます。私たちは説明せずにそのまま歌詞へ入れます。説明した瞬間、内輪の言葉ではなくなるからです。
完璧な人より、欠点のある人のほうが歌にしやすいのですか。▾
そうです。方向音痴や同じ曲ばかり歌う癖といった小さな欠けが、歌に体温を与えます。長所を並べるより、正直に書かれたブリーフのほうが、固有で温かい一曲になります。